2014年4月14日月曜日

乾燥ミズゴケに見る南米チリの植物たち その②

その①に引き続きチリ産乾燥ミズゴケに混入していた植物について。

その前に①で書き直した点。
樹木sp.1→Luma chewuen?に変更。
樹木sp.2→sp.1に変更。
種同定について全く自信はないのですが、葉の形状が類似していること、葉裏に黒っぽい腺点があるという特徴からひとまず本種としておきます。



では、新たな種について。

Uncinia sp.

カギ針状の雌しべ?が特徴的。
最初は科名すら分からなかったが、どうやらUnicinia属の一種らしい。






カヤツリグサ科の一属で、南米やオーストラリア、ニュージーランドなどに分布。ナンキョクブナに似た分布域を持つようだ。

日本では見られない属。




チランジア(エアープランツ)をミニチュアにしたような姿。

南米にはチランジアなどのパイナップル科の植物が分布するからその一つかもしれないが、単に葉っぱが折れて根元だけ残った植物にも見える。
Pinus radiata
(ラジアータマツ?)

最初はイネ科などの草かと思ったが、どうやらマツの葉っぱらしい。







チリにはマツ属の樹木は分布しないが、Pinus radiataが広く植栽されているという。
Pinus radiataは3葉マツ(3枚の松葉が一か所から出る)で、今回見つけたものも3枚目の葉が取れたような痕があったから本種と考えた。




次はシダ。

シダsp. 1

日本のチャセンシダなどに少し似た雰囲気を持ったシダ。葉柄が随分と長いようだ。葉がどれも途中で折れていたため。全形がどのようなものかは分からない。


拡大。

胞子のう群は見られなかった。


シダsp. 2

①で紹介したJuncus sp. 1と並んで多く混入しており、湿地において主要な種であったと考えられた。

シダsp. 1以上にボロボロになっており、葉の全体像を読み取ることができなかった。


拡大。

この破片を見る限り、単葉(一枚葉)でなく複葉(小さな葉が集まっている)であることがうかがえる。

もう一枚拡大。

上と下の葉が同じ種類のものなのかは正直なところよく分からず、シダsp. 2に複数種が含まれている可能性もある。

こちらも胞子のう群は見当たらず。


シダsp. 3 (胞子葉?)

多くのシダは、葉裏に胞子を入れる胞子のうを付けるが、胞子をつける胞子葉と、光合成を行う栄養葉と、2種類の葉を持つ種も少なからずある。




シダsp. 3は葉脈が不明瞭で、また他のシダと比較して不自然にボロボロとなっており、胞子葉であると考えられた。

そのため、sp. 1やsp. 2とは別種としたものの、どちらかの胞子葉であった可能性も大いにありそうだ。

(参考) オオハナワラビの栄養葉と胞子葉

下についているシダの葉っぱらしい形のものが栄養葉、直立して黄緑色をしているのが胞子葉である。


シダの新芽(シダsp. 4?)

ゼンマイ状に丸まったシダの新芽も見つかった。sp. 1~3と別種なのか、いずれかの種の新芽なのかは分からない。



コケsp. 1(左)、sp. 2(右) (蘚類)

スギゴケなどに似たコケも混入していた。ミズゴケも同じ蘚類に属するが、それとは異なる種であった。


コケsp. 3 (苔類)

日本のウロコゴケなどを彷彿とさせる苔類と思われるコケ。

地衣類sp.

小枝についていた。日本でも樹木に着生するサルオガセなどの地衣類があるがそれに近いものだろうか。

ちなみに小枝そのものが今まで出てきた種と一致するのか、しないのかは分からない。




最後に

主役であるミズゴケ。








今回の観察で、ミズゴケを含めて15~17種の植物を見つけることができた。念入りに選り分けたわけではないので、見逃してしまった種もいくつかあるかもしれない。


数百円の買い物で、思いがけず地球の反対側の植物を見ることができてなかなかに面白かった。ちょっとした海外旅行の気分である(笑)。
チリを始め、海外の植物の自生する姿を見てみたいという気持ちが強くなった。






参考
・Wikipedia日本語版 ラジアータパイン http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%B3(2014年4月13日現在)
・Chileflora http://www.chileflora.com/(2014年4月12日現在)





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2014年4月13日日曜日

乾燥水苔に見る南米チリの植物たち その①


着生ランなどの栽培のためにホームセンターで乾燥ミズゴケを購入した。 産地は南米のチリ。






乾燥ミズゴケには、しばしばミズゴケではない植物の枝葉が混入している。 それらは園芸家から見ればただの「ゴミ」であるわけだが、考えてみれば地球の裏側の植物の乾燥標本が手元に届いているようなもので、なかなかに興味深い。

何年か前に、ちりめんじゃこの中のシラス(イワシの子供)以外の小魚やカニの幼生といった「チリモン(チリメンモンスター)」が話題となった。ミズゴケ中の植物たちはいわばミズゴケ版チリモン「ミズゴケモンスター(コケモン?)」といったところか。


ミズゴケには植物だけでなく時に虫なども混じっているようで、検索したところミズゴケに混入した南半球産のカメムシについて紹介されているブログがあった。(害虫屋の雑記帳:園芸店で南半球のカメムシを買う http://homeservice.blog.ocn.ne.jp/gaityuya/2014/02/post_e185.html 2014年4月12日現在)
こちらの虫の方が植物よりも「コケモン」にふさわしいかもしれない。





それでは僕が見た植物たちについて。


ミズゴケから選り分けた植物の枝葉など。
ミズゴケは1袋150gだった。

乾燥して丸まったりもろくなったりしていたので、ぬるま湯で戻してから判別を試みた。




まずは木本と思われるものから。



ナンキョクブナの一種

葉の長さ1.5~3cm、幅1~1.5cm、葉柄0.3~0.5cm。葉はかなり硬質で、常緑の可能性が高そう。





ナンキョクブナは主に南半球に見られるナンキョクブナ科の木本で、そのうちチリには10種類のナンキョクブナ属Nothofagusが分布するらしい。
絵合わせから、今回のものはNothofagus nitida、もしくはN. dombeyiではないかと思ったが自信はない。




Luma chewuen

葉の長さ1.2~2cm、幅0.8~1.2cm、葉柄0.2~0.3cm。葉はやや分厚いが硬くはない。葉裏に黒い斑点が多くあったが、元々の特徴かは不明。



日本のツゲに何となく似た雰囲気。Luma chewuenには葉裏に黒い斑点(腺点)が散在するようで、形状も似ていることからとりあえず本種とした。




樹木sp. 1

葉の長さ0.5~1cm、幅0.3~0.5cm、葉柄0.1cm。茎(地下茎?)は長く、ミズゴケ中にもぐり込んでいた。





見当が付かず。
ミズゴケの中を這うように伸びて生活している小低木、もしくは草本と考えられた。日本の植物で例えると、やはりミズゴケ湿地などで這って生育するツルコケモモなどに近い存在だろうか。
 
 

樹木sp.2の葉の拡大。

随分と肉厚の葉で、葉裏の主脈が突き出す。
葉の表はボツボツとへこんでいる。



イグサ属の一種① Juncus sp.1

日本でも湿地においていくつかのイグサ属Juncusの草本が生育するが、本種も同属と
思われる。ただし種類は分からず。



日本のイグサと比べて随分と茎が太く、大型の種と思われた。ミズゴケ中には大量の木の枝のようなものが混入していたが、そのほとんどが本種であるようだった。

ミズゴケを採取する湿地においてかなり重要な種であるのかもしれない。

 
 

イグサ属の一種①の果実部分の拡大。

日本のイグサ属では、果実の形態が種判別の重要なカギとなることがある。今回見つけた種も、果実形態などをもとに種同定が可能なのかもしれないが、今回はそこまで力は及ばず。


イグサ属の一種② Juncus sp.2

前述のイグサ属①と比較してはるかに華奢な草体で、花序もまばら。

そもそもイグサ科すら自信がない。ひとまずイグサ属の一種としているが、カヤツリグサ科かもしれない・・・。


イグサ属の一種②の果実部分の拡大

状態が悪く、種判別はおろかイグサ属なのかすら僕には確証が持てなかった。





他にもいくつかの植物が見つかりましたが、長くなるので続きは別記事にて。


参考ホームページ

・Chileflora http://www.chileflora.com/index.html (2014年4月12日現在)

・Wikipedia英語版 Nothofagus http://en.wikipedia.org/wiki/Nothofagus  (2014年4月12日現在)

・害虫屋の雑記帳 http://homeservice.blog.ocn.ne.jp/gaityuya/ (2014年4月12日現在)







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2014年4月12日土曜日

4月11日 武庫川沿いの野草

4月から兵庫県のとある大学の院に通うことになりました。こちらに越してきてから初めての更新となります。


家の近くを流れるのが武庫川。
川岸の一角に池状によどんだ場所があり、草が生い茂って周囲と異なる雰囲気であったので少し観察してみることにした。







見つけた花をいくつか。

オオカワヂシャVeronica anagallis-aquatica

ヨーロッパ~アジア原産の帰化植物。
クレソンの名で知られるオランダガラシと一緒に繁茂していた。
特定外来生物に指定され、近年問題視されている草でもある。

有名なオオイヌノフグリと同属で、それに似た花を穂状に咲かせてなかなか美しい。









アゼスゲCarex thunbergii

卒論の調査地(青森)でも何度か出現した。






ハルガヤAnthoxanthum odoratum

ヨーロッパ原産の帰化植物。

カンサイタンポポTaraxacum japonicum

セイヨウタンポポも混生していたが、この場所では在来のカンサイタンポポの方が優勢だった。

実家の辺りで見かけるカントウタンポポより全体に華奢で色も淡い印象。




の拡大。

総苞片(ガクのように見える部分)の先端(赤っぽく色づいている部分)に角状突起が無い、もしくはあってもごく小さいのが特徴。

トウカイタンポポ(ヒロハタンポポ)では角状突起がよく発達し、カントウタンポポでも小さい突起が付くそうだ。
(野に咲く花 山と渓谷社 参考)

















カスマグサVicia tetrasperma

カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間のような植物だということで、「(ラスノエンドウ」と「(ズメノエンドウ」の「間()」の「グサ(クサ)」と名付けられたそうだ。
この場所ではカラスノエンドウとスズメノエンドウも生えていた。

カスマグサは関東にも分布しているが、僕自身は京都、鹿児島、兵庫でしか見たことがないため西日本や暖地に多い草、というイメージを持っている。実際はどうなのだろう。

カスマグサの花は、その大きさの割に非常に長い柄の先に付く。 そのため、カメラのピントが合わせづらく、さらに風でゆらゆら動くためにブレが起きやすいから撮影にはいつも苦労する。

スズメノエンドウも同様に花柄が長いが、カスマグサよりはがっしりしたイメージ。またカラスノエンドウの花は葉の付け根に咲く。

一見ムダにも見えてしまうヒョロッと長いカスマグサの花柄であるが、何のためにあるのだろうか。送粉昆虫との関係が気になるところである。





未開花だったり成長途中だったりで、種同定に不安が残る種も多かった。日をおいて再び観察しようと思う。


上記含め開花を確認した植物(記録した順)
ヒメオドリコソウ、ムラサキサギゴケ、ノミノフスマ、アゼスゲ、ハルガヤ、オランダミミナグサ、カスマグサ、カラスノエンドウ、オランダガラシ、コウガイゼキショウ?、キュウリグサ、オヘビイチゴ、コハコベ、コメツブツメクサ、ノヂシャ、アブラナsp、スズメノエンドウ、タネツケバナ(結実あり)、オオカワヂシャ、スイバ?、ナズナ(結実あり)、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、アリアケスミレ?、カンサイタンポポ、セイヨウタンポポ、スズメノヤリ、アオスゲ(結実あり)、ヒメウズ、スズメノテッポウ、オニウシノケグサ?、コオニタビラコ、ホトケノザ


参考
・山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 監修/林弥栄 写真/平野隆久
山と渓谷社 2008年7月1日 20刷発行

・日本帰化植物写真図鑑 編・著 清水矩宏/森田弘彦/廣田伸七
全国農村教育協会 2001年7月26日 第1刷発行

引用(学名)
・BGPlants http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/index.html (2014年4月12日現在)



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